状態を無くした世界

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沈黙の音が聴こえたので

あたりを見回すと

闇がまぶしく光り輝いていた

 

私はずっと旅の日常をすごしてきて

現実の中の虚構を生きてきた

 

行き止まりの希望に支えられて

つかの間の絶望も味わったが

 

そこにはいつもにぎわう孤独と

たえがたい安心感があった

 

行く先々でいくつもの

干からびた生命に出会いもしたが

やがていずれ

みずみずしい死体となって別れを告げた

 

いつも瑣末な本質に気づきつつも

あいまいな確信に流されてしまうし

 

絶え間なく高価な雑草を買い込みつつ

無能な機能を重視してしまう

 

ひとつしかない選択肢に悩み続け

消せない閉じるボタンを押し続ける

 

独創性のあるテンプレートを駆使して

あげく信頼性のある詐欺師に道を委ねてしまう

 

ところで迷いのない迷子は

絵のない絵本を抱えながら

ひとりぼっちの家族のなか

水のない川ではしゃいでいた

 

木のない森をこえるとそこには

砂のない砂漠が広がるという

そこを果てしなく進んで行くと

やがて人のいない歓楽街に

辿りつくという

 

地面のない地球の上で

状態のない状態は

今日も不在のまま明日を目指し

果てしない反復を続けるだろう