あの頃に帰りたい

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トナカイに捨てられた

サンタクロースは

プレゼントも配らずのんだくれていた

ああ失ってはじめて気づいた

毛皮の温もり

跳ねるような蹄の音

その懐かしい足音も今では聞こえない

眠りに落ちるその瞬間の

くたびれた赤い服の男の言葉は

ああ、あの頃に帰りたい

 

1977年9月5日に打ち上げられた

人工衛星ボイジャー1号は

その日太陽系の境界に立っていた

その地面も空もない空間の

187億km先の孤独の通過点

暖かく懐かしい太陽系を背にして

彼はまたさらなる深い宇宙の可能性へと

飛び立とうとしていた

17時間21分56秒をかけて

地球へ送られてくる

その信号のメッセージは

ああ、あの場所へ帰りたい

 

囚人は小窓から空を見上げた

なにがどうしてしまったのか

男にはどうにもよくわからない

コカインで1億ドルも稼いだ彼は

惨めにもただ毎日

訪れない娘との面会を夢見る

もしもおれがあの娘にひとつだけ

言い残せる言葉があるとすれば

ああ、おれはあの頃へ帰りたい

 

混沌と殺戮の20世紀に別れを

告げたのも束の間

共有と共感と相互監視の

時代の幕が開けたよ

新しいルールはもう覚えたか

説明はいつもあるとは限らない

喰い物にされる準備はできているか

疲れ果てた女の

もたれかかった壁に

名もなく刻まれた

誰かのメッセージは

「あの頃に帰りたい」