春の夜

f:id:bettychang:20190522195605j:plain

 

昼には限りある日の光を浴びて

夜には遠い星の日常を想う

 

気のきいた韻も比喩も

春にはもう必要がないよ

 

目を閉じれば聴こえてくる

無数の夜の心臓の鼓動

 

名前のない電信柱にも

命が宿るのさ

君が本当にそれを望むのなら

 

だけど思うだけじゃあだめだ

大声で叫べ

ガラスが音を立てるほど

ネズミの眠気を覚ますほど

 

空は漆黒、少し赤が混じる

夜は巨大な紺色のシーツ

一日中走り回った獣たちを

優しく眠らせている

 

おれにもこの夜のような

優しさがあったなら

きみにもこの春のような

茫洋な時間があったのなら

 

春の夜を散歩しよう

時間のあるうちに

春の夜を散歩しよう

地軸のずれぬうちに

 

そうすればぼくは

春の夜に包まれて眠る

君を想うだろう

 

そうすればきみは

春の夜に包まれて眠る

だれかを想うだろう