重力

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男がひとり

何時間もつったっている

なにをしているのかとたずねると

重力と戦っているのだという

いつも負け続けだと彼は笑っていた

 

男は完全に正しかったことが

今なら、君もわかるだろう

私たちは誰もが

重力と戦っているのだ

自分を押し潰す見えない力と

 

風が鳴っている

古典的な5音階

ミソラ、ドレミ

ソラレ、ソラミ

雨が和音を組んでいる

FMaj7、C、G7、CMaj7

 

自然を人間が模倣した

あるいは人間が自然の中に

自分を見るのか

彼らにとっては容易なことが

誰かにとってはどこまでも困難だ

偏差値(今もあるのだろうか)

50くらいの高校生が

東大の入試問題を解くように

困難だ

あるいは他人の苦労は

外からは見えないともいえる

自然の美しさは

果てしない時の積み重ねを経て

形を作っているのだろう

あるいは(略)

 

サイレンが鳴り響いては

去って行くと

消えていく人もいれば

戻ってくる者もいる

生死を分けるものを

偶然と捉える者もいれば

教訓や、もしかすると啓示と

捉えるものもいる

だが結末は同じ

だが結末はみな同じ

 

重力が全てを作った

空間にに存在したガスや塵が

収縮してありふれた太陽系を

生み出したのだという

そして誰もが

自分を押し潰す力と

今日も戦っているんだ

だからぼくもこうして

黙ってつったっている

いつか誰かに

かつてのぼくのように

何をしているのかと

尋ねられたなら

こう答えるんだ

自分を押し潰す力と

戦っているんだよ